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ハイバイ『ワレワレのモロモロ』を観た

 

9人の俳優が集い、それぞれの酷い体験をもとに脚本を書き、演じるというコンセプトの演劇。長さも舞台となる時代もまばらな8作品から成っている。
あくまでも実体験を「もとに」書いているわけで、フィクション部分の方が多いのかもしれないけど、「どこまでが本当の話なんだろう?」と気になってしまうくらい、壮絶な話のオンパレードだった。 

たとえば、1作品目の『ほほえみのタイ』はもちろん酷い体験ではあるけれど、オープニングにふさわしく、笑える酷い体験だった。役者さんのコミカルな演技も大きいけど。
もっとも笑えなかったのは「『て』で起こった悲惨」。ハイバイで起きたことを題材として扱っていることもあるし、その場に流れている空気が本気で気まずい。どこまで演出でどこまで演技か、その境目もどの作品よりもあいまいだった。
観劇した人の感想に、「岩井秀人が演じる岩井秀人」っていう言葉がちらほら見えたけど、そこがもっとも混乱したところだった。演出家さんってあんな風にめちゃくちゃなこと言うイメージ、あるもんなあ。岩井さんが実際にあんな風に怒っていても不思議ではない。
それにしても、自分がブチ切れてる作品を採用しちゃうのも、提出するのも普通無理だよ、すごいよ。面白い演劇を作ることが第一っていうぶれない目標があるからなのかな。

ホラーやサスペンスみたいな大げさな描写はないけど、どの作品にも日常の中の切なさや悲しみ、怖さ、痛みがあって、瞬間的にはものすごく笑ったりしつつも、終始ヒリヒリとした気持ちで見ていた。
「私演劇」と呼ばれるハイバイのお芝居は、リアルだからこそ目を背けたくなるようなところがたくさんあって、でも作る側がそこから逃げないからこそ面白い作品が作れるのかもしれないなと思った。

舞台も、組み立てられたセットはなく、プロジェクターと、四角い枠と、机と、小道具だけなのにそこにはちゃんと別々の世界があった。衣装を変えるだけでまったく別人に見えた。
そのことにすごく感動したし、それはとても「演劇らしい」と思えて、ドキドキした。

個人的には『きよこさん』が一番好きでした。女同士の友情と、周りからバカにされても変わらないきよこさんが素敵だった。「酷い体験」なはずなのにラストなんて感動で泣いちゃいそうになった。

 

追記
リンクの岩井さんのインタビュー見ると、俳優は役になれない、という風に発言されていたりするのでちょっと見方が変わってくる、、、。
時間の都合もあるけど、男性が女性を演じる時にメイクせずカツラと衣装だけなのもそのあたりが関係してるのかな。
http://www.performingarts.jp/J/art_interview/1108/1.html