『尺には尺』

観終わってすぐは「これは喜劇なのか??」ってもやもやしてたんだけど、パンフレットを読んで、「結婚が罰として描かれている」とあってなるほどと思いました。 劇中で結婚するカップルに対して、どう考えても破綻するだろってもやもやしてたけど、それで良いんだなと。


というのも、当時は「婚前交渉は罪だけど結婚しちゃえばオッケー」っていうなんだかすごい決まりが実際にあったらしく、いわゆるできちゃった婚はその罪を逃れられる手段だったとか。シェイクスピア自身もできちゃった婚だったらしい。

藤木さん演じる性に興味がなく厳格な公爵代理・アンジェロ、多部ちゃん演じる純粋すぎる修道女見習い・イザベラ、辻さん演じる心が広いと見せかけて一番ちゃっかりしている公爵が中心人物。


イザベラの兄・クローディオが恋人を正式な結婚の前に妊娠させてしまい、アンジェロによって罪だと判断され、死刑を宣告されてしまうところから物語は始まる。


兄の死刑を取り消すため、イザベラがアンジェロに直談判しに行ったところ、アンジェロはイザベラの話ぶりにすっかり虜になってしまい、「お前を私にくれるなら兄貴を殺さない」なんてむちゃくちゃな要求をするものの・・・というお話。

人の血が流れてないなんて言われるほど厳しかったアンジェロはイザベラに恋焦がれてのたうち回ってるし、イザベラはイザベラで純粋であるがゆえに「お兄さまの命よりも私の純潔の方が大切!だから死んで!」なんて残酷なことを大まじめに言ってるし、そういう登場人物の真剣な姿にこそ笑っちゃう。

オチが「ズコーーーーッ!もうええわ!」的な展開で吉本新喜劇っぽいなと思いました。新喜劇まともに見たことないけど。

通路を使った演出が多用されていて、通路じゃなくお客さんの前(!)を通ることもあってびっくりした。2階席で全部を見れなかったのはちょっと悔しかったなあ。

『Forever Plaid』感想メモ

▽フォーエバー・プラッドについて

ステージ衣装であるチェック柄のタキシードを取りに行く途中で交通事故に遭って死んでしまった若きアマチュアコーラスグループ「フォーエバー・プラッド」が、1日だけよみがえって生前出来なかったライブをやる、というお話。

登場人物はフランシス(川平慈英)、スパーキー(松岡充)、ジンクス(長野博)、スマッジ(鈴木壮麻)の4人。
バックの音楽もすべて3人のバンドメンバーによって演奏されていて、全員ほぼ出ずっぱり。

昼公演だったしまだ夜公演は残ってるけど、東京最終日ということでお客さんもノリが良くて、会場の雰囲気のあったかさに感動した。


一見大人しそうな人が多かったんだけど、参加コーナーではみんな元気よく手を挙げていて気合いを感じた。当ててもらえるように物語の鍵となっているチェック柄の服を着る本気ぶりすごい。ちなみにハッとして自分を見たら何も知らないのにチェック柄だった。意識高い

▽それぞれのキャラについて

▶︎川平さん


・すごく豊かな歌声。


・それぞれがメインを取る構成になってるんだけど、1番メインヴォーカルらしい歌。


・基本は明るく振る舞ってるフランシスが自分たちが死んでいるということを口に出せなかったり、「ちくしょう!」と悔しがる姿とてもグッと来た。


・『マチルダ』でのスパーキーからの紹介は「サッカーファンの人!」


・「クゥーーーーッ!」や「良いんです!」など中の人のネタ大放出していた。

▶︎壮麻さん


・歌が上手いって言ったら全員上手いんだけど、声量はすごいし音域は広いしセリフをしゃべる声も低くてカッコいい!

『マチルダ』のスパーキーからの紹介で「イイ声の人〜〜〜!」って言われてたのも納得。


・結構毒舌だったのツボ(慈英さんを見て「俺たち足したら100超えるよ?」、昼公演のお客さんに対して「(この人たちは)仕事してない人たち」)


・55歳(!)とは思えない爽やかさ&動きのキレで惚れた。

▶︎松岡さん


・『マチルダ』での本人の紹介が「ロックの人〜〜〜!」だったけど、表情も出す声もロックに留まることなく、歌の世界を広げてる!っていうかんじだった。


・スパーキーという役自体がそうなんだと思うけど、とにかくやんちゃ。とにかく絡む。とにかく動く。他の人のソロでもついつい見ちゃった。


・しっかりボケてしっかりツッコんでくれる。


・ジンクスとの異母兄弟コンビ可愛いすぎて真顔になった。


・化粧してるし遠目から見ているとはいえ、1人だけ高校卒業したばかりの専門学生という設定に納得出来るくらい若すぎておばけ。

▶︎長野くん


・ジンクスは最初の方ず〜〜〜っとオドオドしてるのが可愛かった。


・パンフレット見て思い出したけど、途中のソロ曲でその緊張から解放されていく過程があるなど1番愛着の湧くキャラクター。


・16ポンド?のときだったか荷物運んでるダンスをしてるんだけどその時真顔なのがとても面白い。


・役をいったん忘れて見ると出で立ちが完全に王子様。


・V6では上から2番目だけど、この時は末っ子だからなのか天然発言が多くて癒された。

▽まとめ


4人とも死んでいるという絶望が根っこにあるのに、すご〜〜〜〜く楽しかった。
歌や当時の様子を全く知らなくても楽しめたけど、知っていたらもっと面白いはず。パンフレット読みながらゆっくりかみしめたい。
これがエンターテイメントなんだ!と思ったし、崇高な芸術もステキだけど私はこっちの方が好きだなあと思った。
まだ横浜公演とか終わってないんだけど、再々演してほしいな。

『オー!ファーザー』を観た

普段あまり本を読まない私だけど、伊坂幸太郎さんの作品はいくつか読んだことがある。


『オー!ファーザー』は岡田将生くんが主演するということで映画化された当時に買って読んだんだけど、多恵子ちゃんのキャラがどうしても受け入れられなくて(何言っても付きまとう人って怖すぎない?!)、観ずじまい。
この前TSUTAYAであ行から順に見てたら目に入って、旧作で100円だし、とそんなに期待せず借りた。

正直本を読んだのが2年くらい前で細かいことは忘れてたんだけど、それがかえって良かったなあと思った。
一緒に観てた母が「あれ?あのくだりないの?」と言っていたように、なんとなく物足りない感じは否めない。
でも、実写になることによって、「4人父親がいる」という設定の奇妙さが、意識しなくても常に目に入ってくるから、ただの生活してるシーンがもう既に面白かった。
由紀夫が救出されるところも、なんかチープだし岡田くんの顔は迫ってくるしで感動じゃなく爆笑してたし。

ただ、この話って、由紀夫の友達や家族は無事だった訳だけど、彼らの暮らす世界は決して平穏じゃない。
最近、ハッピーエンドの話でも「この後この人たち別れるかもしれないし、死んじゃうかもしれないし、ずっと幸せとは限らないよな・・・」と考えてしまって切なくなるんだけど、この話もそういう映画だった。

由紀夫が葬儀の夢を見た、と語るシーンがあったんだけど、オチがあっさりしていたぶん、そこが唐突に感じられて、見終わった後になんとなく不安が残った。
由紀夫の見た夢はありえない妄想じゃなくて、いつか直面する現実。それは由紀夫にだけじゃなくて、私たちにも起こる現実。

大切な家族や友達と2度と会えなくなる未来を思うと、つらくて悲しくてたまらなくなる。
でもどうしても避けられないならせめて、痛くなくて、苦しくなくて、急じゃない最期であってほしい。
最近も、若い女の子が亡くなった状態で見つかったとか、自ら電車に飛び込んで亡くなってしまったとか、そんな信じたくないような事件が現実に起きてる。
その度に、少し立ち止まって冷静になったら、あるいは相手にも人生があることを想像出来たら、起きなかったのかなあと思ってしまう。

2時間弱の映画の中で、私は4人の父親たちがすごく愛おしくなった。
形は普通と違うかもしれないけれど、愛情をいっぱい注がれて育った由紀夫はどう見ても幸せな子どもだった。

きれいごとで済まないことがあるのは分かってるけど、それでも、少しでも多くの家族が幸せであって欲しい。
そう思った映画だった。